Opticaのリーダーたちはこの3月、ワシントンD.C.で開催された年次総会に集まり、戦略についてのディスカッションや今後の道筋についてのブレインストーミングを行いました。Opticaの未来を考えることは必要かつ興味深い作業ではありますが、言うまでもなく、科学の世界に飛び込むほど楽しいものではありません。そういうわけで、2人のハイレベルなゲストスピーカーによるプレナリー講演は、毎年のOpticaリーダーシップ・カンファレンスのハイライトとなりました。
今年のプレナリースピーカーは、ノーベル賞を受賞したアメリカ国立標準技術研究所（NIST）の物理学者ウィリアム（ビル）・D・フィリップスと、ウルフラム・リサーチの創設者であるコンピューター科学者スティーブン・ウルフラムでした。どちらの講演も、科学の発展と人類全体のウェルビーイングのために、適切なツールが果たす役割について考える機会となりました。
より強力なツールを開発することは無論、人類の進化の証でもあります。そして、近代科学における革新は、さらなる優れたツールや方法と密接に結びついています。科学の進歩は、しばしば理論と実験の建設的な相互作用から生まれ、新しい実験ツールによって、より詳細な観察が可能になり、理論モデルを改善する動機付けとなります。しかし、そのためには、新しい理論ツールが必要となるのです。
Opticaリーダーシップ・カンファレンスのプレナリー講演で、ビル・フィリップスは、大きな影響を与えた実験ツールのひとつである原子のレーザー冷却について紹介し、冷却原子コミュニティがどのように始まったかを概説しました。最初のレーザー冷却ツールのひとつを発明したこの分野のパイオニアであるフィリップス氏は、この分野が今後どのように進歩し、どのような方向に向かっていくのかについて見解を語ってくれました。
対照的に、スティーブン・ウルフラムは革新的な理論ツールを開拓してきました。これまでに恐らく最も成功した代数問題ソルバーであるMathematicaを開発したのは彼の会社です。私が学生だった頃、コンピューターは物理的な問題の数値シミュレーションをするようにしかプログラムされていませんでした。数値モデリングと多数の解析解の両方を可能にし、強力なグラフィックスとデータの可視化機能をパッケージ化することで、Mathematicaは数学者や物理学者の仕事に革命をもたらしました。
リーダーシップ・カンファレンスでのルイス・L・サンチェスーソト（Opticaフェロー）との刺激的なパネルディスカッションにおいて、ウルフラムは、最近まで科学者は数理モデルを使って世界の理解を深めようとしていたと話しました。彼はさらに、将来的には計算モデル—つまり、世界を数式で説明するのではなく、複雑な行動につながる一連のシンプルなプログラムとして説明するモデル—を使って進歩することになるだろうというビジョンを語りました。
ウルフラムが提示したもうひとつの興味深い提案は、Wolframノートブックという新しい科学出版フォーマットに関するもので、彼の会社はすでに書籍の出版をサポートしています。このフォーマットは、文書にインタラクティブ性を持たせ、読者がデータに関与して新たな結果を導き出せるようにすることを意図したもので、科学ジャーナルで一般的に採用されて普及すれば、革命的なものになる可能性があると言えます。
フィリップスとウルフラムの講演はどちらも、科学のツールを拡張することに焦点を当てたビジョンが—理論領域であれ実験研究室であれ—可能性の宇宙をいまだかつてない方法でいかに広げることができるのかについての「短期講座」を提供してくれました。この講演で聞いたことを私は今も夢に見てます！
ゲルト・ロイクス
Optica会長