Optica会長の職務のうち、年間で最もやりがいを感じることの一つに、若い科学者たちと直接関わる機会があることが挙げられます。これはOpticaが世界的に展開している取り組みです。本会は約8,700人の学生会員を擁しており、その多くは南極大陸を除くすべての大陸の教育機関に広がる420のOptica学生支部に所属しています。
その学生たちが学位を取得しキャリアを築くという大変な努力を重ねつつ、自分の研究分野について一般の人々に伝えようと独自の奮闘と熱意を見せる姿を私は幾度となく目にしてきました。そのための独創的なアイデアも彼らは持ち合わせています。
例えば、7月にブラジルを訪れた際に、私はパラナ連邦大学、パラナ連邦工科大学、そしてサンパウロ州のカンピーナス州立大学にある支部を訪問しました。各支部がいろいろな取り組みを行う中、ある支部では、多様な光学効果を視覚的に描いてこの研究分野の人達を紹介する「コミック」の連載を考案していました。また、別の支部では以前は互いのつながりが希薄で分断されているような印象も多少あった研究者同士が、懇親会やイベントを企画するなど積極的に関わろうとするようにもなってきています。
何よりも、研究のコミュニティやつながりを築くことに本気で取り組む情熱を目の当たりにしました。本稿を執筆している今は8月の下旬ですが、月末には日本と韓国の支部を訪れて見学することを楽しみにしています。そこでまた素晴らしいアイデアや取り組みに出合えるのではと期待しています。
このような見学をしていると、光学とフォトニクスの次世代の研究者やエンジニアの育成がいかに必要であるかということが分かります。若手の才能に投資し、関心を高めることで、この分野の継続的な発展は約束されます。そのような取り組みをOptica財団は20年以上にわたり積極的に進めてきました。実際、私がOpticaで役員を務めている間も、財団は700万ドル近くを投じて3万人以上の未来のイノベーターたちにプラスの影響を与えています
このような重要な取り組みは、グローバルな学生メンターとして活躍してくれる次世代リーダーを募集する財団のAmbassadorsプログラムなどの活動を通じて実施しています。加えて、財団は奨学金、賞金、助成金などによるさまざまな支援も行っています。また、Optica Foundation Challengeなどのコンテストも開催し、変革をもたらす可能性を秘めた発想をもつ若手研究者に多くの資金を提供しています。
OPNの今号では特集ページ(54ページから)を設け、光学分野で最も有能な若手の研究者やエンジニアを惹きつけ、支援し、研究を続けてもらえるようにすることがこの分野の未来を決める画期的な進歩の原動力になると確信して賛助してくださる皆様に感謝しています。ご一読いただき、惜しみない支援が注がれるこの分野の一員として賛助の手をご自身で差し伸べることを是非ご検討ください。
もちろん、そのほかにもOpticaは、今月には米国のワシントン州タコマ市で開催されるFrontiers in Optics + Laser Science(FiO LS)などの会合で、学生たちに研究を発表し議論する機会なども設けています。Opticaの年次総会の役割も兼ねたこのカンファレンスは、講演やポスター発表を通じて研究を発表したり、光学やフォトニクス全般にわたる非常に幅広い論題について学んだりする場として、学生に特に歓迎される会合であることが長年にわたり証明されてきました。今年はFiO LSもOptica Laser Congressも同じ会場で開催されますので、視野を広げる機会はさらに増えます。会場で皆様とお会いできることを楽しみにしています。
—ミハル・リプソン
(Optica 会長)